嘉門達夫アルバムレビュー(ビクター編)その1

前回の続きです。

バルセロナ

ビクター移籍後の初アルバム。実はノーマルのアルバムは「日常」以来3年ぶりのリリース。
実は初めて聞いた嘉門達夫のアルバムがこれでした。
内容は恐らく僕が思う「一番オーソドックスなスタイルで、一番各楽曲の出来がよく、非常にまとまりもある
「全アルバムの中では最高傑作と言っても過言ではない」と思います。
(ただし、ベストアルバム等は除く)
たぶん僕が最初に聴いたのがこのアルバムだから、嘉門達夫にハマったとも言えます。
シングル曲(後に形を変えてシングル化したのも含めて)である
ハンバーガーショップ」「結婚しようよ~彼女はもうすぐ26〜」「FUTAMATA」は完成度高いですし、
ほかの曲もなぜか一発屋ブルースと同じ曲調が変わってしまい、それでも安定した面白さを誇る「帰って来た小市民」、
子供の頃の情景をロカビリーに乗せてテンポ良く歌う「ドッヂボール」、
あったらコワイのお勉強関連ネタをとにかく勢いでまくしたてる「学問」、
タイアップ曲で笑いは少ないものの、食卓の風景を非常に嘉門達夫らしい切り口で描く「ごはんを食べよう(美味でバビデブー)」
などなど、どこを切っても名作揃い。まぁ最後の「ジャージオンマイマインド」だけ若干スベリ気味ではありますが
これも最後の最後で本当に勢いで何とかしようとする感じが面白いです。


そしてこのアルバムのもう一つの目玉と言っていい「ショートソング」。
あのアルバムは「ショートソング」とそうじゃない歌が交互に収録されてるんですが
それが上手くショートソングの「ショートである面白さ」を引き立てています。
ショートソングの面白さって曲が終わった後「いや終わりかい!」とツッコめる所にあると思うんですよね。
どうしても最近のアルバムはショートソングがメドレー形式で収録されており
あれだと「ショートソング」ではなく「サビだらけメドレー」みたいになっちゃってますし。
あと1曲1曲にアレンジが施されており、それがなお各楽曲の世界観を広げ、
より「終わりかい!」にいい意味で繋がって行ってると思うんですよね。
こういうのってCDだからこそ出来る「音遊び」という感じで、せっかくお金出してCD買ったんだから
こういう凝り方みたいなのをして欲しいですね。

リゾート計画

その名の通り「夏のリゾート」をテーマにしたアルバムなのですが
そもそもテーマに無理がないか?と。
変に「縛り」を作ってしまったためにイマイチアルバム全体(楽曲1曲1曲も)に
広がりが無くなった感じがするんですよね。
(テーマにそった曲で面白かったの「温度」ぐらい?)
小休止のように間に入ってる「コミュニケーション」や「怒りのメドレー」の方が
いつもの安定した嘉門達夫が味わえますし、そっちのインパクトの方が残ります。


あと、この頃から「俺はシンガーソングライター(今で言う「ミュージシャン」とか「アーティスト」の意味)と呼ばれたい」
と言い出して楽曲面でもこだわりを見せるのですが、それが嘉門達夫にとって「余計なこだわり」
もっと言うなら「変なイキリ方」をさせてしまって、むしろマイナスに働いたように思えますね。
特に先行シングルの「勝手にシンドバット」がそれを完全に象徴してます。


あと「ペンション2」は肝心のオチ「てな事言うてる女に限ってブス」を入れないと
成立しないと思うのですが、なんで省いたのと。
あと省いたという事で言えば「映画の窓」のOPで「SF映画ラブロマンス、そしてホラー映画の予告を」
言っているのに「ラブロマンス」が入ってないんですよね。
恐らくこの当時にテレビで「映画の窓」をやってて、それを見る限りラブロマンスは
「他人丼(どんぶり)」だと思うのですが、あれはカットしないで欲しかった。
あの当時、全国的に「他人丼」が広がってなかったの判断なんでしょうけど
ドッチボールの「三角ベース」の事もあるし、それは「流れ」を大事にして入れて欲しかったなと。

続いてコンセプトアルバムですね。
いろんな豪華ゲストを招いてみたいなアルバムで
当時ヤンタンとかでこのアルバムに付いていろいろ語ってて
凄く期待してして聴いてみたら、思ってた以上にそれほどでもなかったという。
たぶん「豪華ゲストを迎えてみんなでワイワイ楽しい事を」というのが
「WE ARE THE 魚屋のオッサン'91」で完結してしまって
あと嘉門達夫ソロ曲を除いて、全て蛇足と言うか惰性で入れられてるように思えるんですよね。


今回いわゆる「コントトラック」っていうのがCDに初めて入る(前作の「コミュニケーション」みたいなのは別として)
のですが、面白かったのは「未知との遭遇」「朝までアップダウンクイズ」「同時通訳」
この辺は脚本にひねりが利いてて面白いのですが、それ以外がほとんどが
脚本がベタすぎてひねりがなさすぎるというか単純につまらない。


特にコントトラックの目玉となるはずの「ツッコミ・ドレミファドン」のテンポが非常にゆっくりで
あれもっとテンポよくどんどんツッコんで行かないと面白くないと思うんですよね。
昔、嘉門達夫が芸人仲間とやってたコントらしいので、そのメンバーとやった方が
良かったんじゃないかと思うんですよね。というかこのトラック嘉門達夫未登場やし。
パネラー役の原田伸郎さんもチャーリー浜さんも本来ボケ役の上に
前へガツガツ出るタイプの芸風じゃないですからねぇ。


あと憂歌団を演奏、バックコーラスに迎えて共演した「BINGO!」という楽曲が
歌方面の目玉だと思うんですけど、この詞の内容が正直全く憂歌団とマッチしておらず
もうちょっと嘉門達夫×憂歌団だったら大阪の泥臭いものを面白悲しく歌えたやろ
って思うんですが、すごく勿体ない事しちゃってるなと。


そしてコンセプトアルバムでは毎回恒例になってる
「コンセプト関係ない嘉門達夫のソロ曲が面白い」という毎度のパターンを
踏んでおります。今回だと「血液型別ハンバーガーショップ」「オーマイガー!!」「ジミー&ハデー」など。

THE BEST OF KAMON TATSUO

「替え唄メドレー」ヒット祈願で出したビクター版のベストアルバム。
前述のアルバム3枚からほどよく楽曲が収録されており
当時「替え唄メドレー」で嘉門達夫を知った人に聞いてもらうには
いい感じのベストだったんじゃないかな?と。
コロムビア時代にアルバム未収録の「アホが見るブタのケツ2」の録り直しや
同じく未収録の「あったらコワイセレナーデ1」を「2」とのベスト盤として
録り直したりと、単なるベストアルバムじゃない凝り方をしておりますし。


ただ一つなんで「やってミソ!」を入れたのかと。
あれ歌もイマイチやし、タイアップした商品も売れてなかったいわゆる黒歴史なのに。
「俺はカルビーのCMソング歌ったぞ」ってアピールしたいのかなんなのかわからないけど
商品がヒット商品じゃないと意味がないと思うんですね。
それなら、すでに発売されてた「替え唄メドレー2」を入れるべきだったんじゃないかな?」と。


と1枚目のベストアルバムで一旦締めさせて頂きます。
次はヒットアルバム「天賦の才能」から次のベストアルバムまでの4枚のレビューを
していきたいと思います。それではごきげんよう

バルセロナ

バルセロナ