嘉門達夫アルバムレビュー(ビクター編)その2

タイトル通り嘉門達夫のアルバムレビューです。
「コロムビア編」「ビクター編その1」はこちら。

天賦の才能

もう完全に「替え唄メドレー」がヒットしたから、今のうちにアルバム作って売ってまえ!っていうのが見え見えですね。
ただ肝心の嘉門達夫本人がアルバムを作れるまで、ネタのストックが溜まってなかったせいで、内容がスカスカです。
なのでとにかく「ラジごめでやってたコーナーをそのまま歌にしました」みたいなので埋め尽くされていまして、
嘉門達夫が「自身の番組から集まったネタを歌にしている」というのは周知の事実であったりはしたんですが
今ままでアルバム内でもせいぜい2曲ぐらい。あくまでメインは「ストーリーのある歌」だったんですよ。
(今回ストーリーがある歌って「鼻から牛乳」とあのねのねのカバー曲「つくばねの唄」ぐらい)
どうしても番組で募集したネタを集めたタイプの曲って「一つのテーマに基づいて該当するネタをひたすら挙げて行く」
形式になってしまうので、アルバムでそういう曲ばっかりなってしまうと、聴きごたえに欠ける上にすぐに飽きてしまうんですよね。
だからこのアルバムって凄い売れたけど、一時ブックオフでよく見る事になってしまったんだと思います。
もう一つアルバムを飽きさせないポイントとして「音楽性が高い曲」が多いと事なのですが
今回いわゆる「音遊び」に徹した曲って一曲目の「アカペラな夜」ぐらい。
それ以外は歌どころかほぼ喋ってる感じで、これもブームが過ぎた後ブックオフに売り飛ばされた原因の一つなんじゃないかと。
作詞クレジットに「ヤンタンオールスターズ」や「ラジごめオールスターズ」のように
「出所をちゃんと載せるようになった」というのは、もちろん良い事ではあるんですが
それが反面「俺はこれメインでええねや」って変な開き直りにつながってしまったようなそんな感じに見えて仕方ないんですよね。


あと今回、真面目な歌第二弾として「ブルーバレンタイン」という曲が収録されているのですが
これが「思春期の女の子の切ない恋」を歌った歌なのですが
例えばこれが堀江淳みたいに「中性的でキレイな高い声」を持った人ならともかく
あのガラガラ声で「恋占い大嫌い」って歌われても、どないせーっちゅーねん!とw
まだ「宴」の「バイバイスクールデイズ」は嘉門達夫の青春時代の事を歌ったんだろうなってのが
想像付くのでまだ納得できるんですが(曲の善し悪しは置いといて)、
当時あれを聴いた嘉門達夫ファンがみんな「どうした!?嘉門達夫」ってなりました。

怒濤の達人

初の2枚組アルバム(コロムビアが勝手に出したベストアルバム的なのを除いて)。
この辺嘉門達夫が「脂が乗りきってる」のを象徴できる、中身の充実したアルバムです。
ようやくこのタイミングで「アルバムに出来るだけのストックが溜まった」って感じですね。
今回の目玉はやはり超大作である「家族の食卓」でしょうね。
嘉門達夫が持ってる「音楽性の広さ」を宮川泰とフルオーケストラによって最大限に広がった名作です。


他は10年の時を経てようやく形になった「哀歌〜エレジー〜」や
悲しいクリスマスソングメドレー「ひとりぼっちのクリスマス」、
嘉門達夫の大阪描写、最初で最後の集大成「関西キッズ」、
リゾート計画収録の「映画の窓」の新作、
他に人気シリーズの「鼻から牛乳」や「替え唄メドレー」の新作
(この頃はまだ新作が面白かった)もあり、聞きごたえ充分。


今回も相変わらず番組のネタから形にしたものも多いのですが
前回「んなアホな!」や「この中にひとり」など
一つのコンセプトに対してネタ数が多すぎるという問題があった楽曲も
それぞれ「ワッチャー&ひねりなさい」「ネタのワンダーランド」と
ネタを二階建て、三階建てにし、ネタを厳選でき、それぞれ上手く上位互換となりました。
(ただ、個人的に「ワッチャー&ひねりなさい」は
「ワッチャー少なすぎ、ひねりなさい多すぎ」、
「ネタのワンダーランド」はライブ録音でもないのに、
ライブの演出そのままやってて、「バルセロナ」でも書いた
「CDならではの演出をやって欲しかった」という部分で不満はあるのですが)
あと「学校の先生」は「感動できるCメロ」を付けるという工夫も見られます。
やっぱりこれぐらいの嘉門達夫による味付けは欲しいですよね。


と非常に充実した内容ではあるんですが、このアルバムも
「ほとんどの曲が嘉門達夫の語り」で構成されています。
「歌」と言えるのは「怒涛編」は「ショートソング・メドレー」と「家族の食卓」、
「達人編は」「帰って来た替え唄メドレー4」「ひとりぼっちのクリスマス」「コンサート」
といわゆる「特別仕様」の楽曲ばかりなんですよね。
もうちょっとメロディを聴かせないとやはり飽きてしまう原因になってしまうのではないかと。


他に不満点と言えば「男の気持ち」という曲があって、僕はこの曲嘉門達夫の草食系男子な部分が
全面的に出て好きなのですが、ラストの言葉がライブでやったver.と変わってしまって
ちょっと男の事を自分で褒め過ぎちゃうか?と。
僕はライブでやった「男ってそりゃあいやらしい事をいろいろ考えたりもするけど
いざとなったら『腕組もうぜ』そんな一言すらも言えない生き物なのですから」
ぐらいで丁度いいと思うんですよね。


そして「宴」以降、アルバム名物(?)となってる真面目な歌ですが
今回の「コンサート」は今までの「安易な青春ラブソング」と違って
嘉門達夫の「コンサート」への思いが詰まってて、僕は嘉門達夫の「真面目な歌」の中で
1,2を争う出来だと思います。
つかライブツアー「怒涛の達人」で、なんでこれじゃなくて「バイバイスクールデイズ」を歌ったのかと。
武道館でコンサート出来たんだから歌うのはこれでしょうと。
そして、この曲じゃないのになんで歌いながら泣いているのかとw

NIPPONの楽しみ

前々回の反省なのか、替え唄メドレーブームが過ぎてゆっくり出来たのか
今回はちゃんと「ネタがしっかり溜まってから」のリリース
そして、前回前々回を反省したのか今回は「歌」になってる曲が多いです。
「替え唄メドレー」や「鼻から牛乳」ほどの大ヒットとはいかなかったものの
「Go!Go!スクールメイツ」と「NIPPONのサザエさん」という2枚のシングルを受けたお陰もあったんでしょうね。


ただそのせっかくの先行シングルも「NIPPONのサザエさん」はほぼそのままなのでいいとして
「Go!Go!スクールメイツ」は歌のコンセプトそのものがガラッと変わりすぎて
せっかく学校あるあるの楽しい歌だったのに、なんか歌詞が凄い説教臭くなって
僕は嘉門達夫のそういう所が良くない所だと思ってるので、この歌はシングルのまま入れて欲しかったなぁと。


他にもこのアルバムは「怒りのグルーヴ」「フニクリフニクラ」「なんなんだブギ」「娘の事情」など
いいテンポで聴かせてくれる歌が多いので、それだけで心地よく
前回の「怒涛の達人」に比べると濃度は薄くなったものの、反復性はこっちの方があると思います。
細かい事を言うと「怒りのグルーヴ」が短すぎ、「なんなんだブギ」長すぎとか
ちょこちょこ不満はあると言えばあるのですが。
特に「怒りのグルーヴ」の「南極2号」のくだりはオチに持って来ないとしっくり来ないんですよね。
(ツアー「怒涛の達人」で歌ったverはもうちょっと長くて、南極2号の出てくるくだりはこれがオチだった)


あと今回は真面目な歌が2曲入ってるんですが、2曲もいらんやろと。
「地下鉄」の方は作詞作曲が当時のマネージャーだった、ミュージシャン風呂哲で
彼の詞の世界観が結構嘉門達夫にマッチしてて良かったんですが
問題は嘉門達夫作詞の「恋愛初期」、なぜ彼はあのガラガラ声で
乙女心を歌おうとするのか、僕にはさっぱり理解できません。

THE BEST OF KAMONTATSUO II

マンスリーCDリリース計画の間に発売されたビクター版のベストアルバム第2弾。
なのですが、今ままで嘉門達夫のベストアルバムって「エエトコドリ!」にしろ
「THE BEST OF KAMONTATSUO」にしろ結構いい出来だったのに
ここに来て「え?これがベスト?」という感じの中身になりました。


原因は今回のベスト、シングル曲多いんですよ。
で、以前僕はビクターのシングルコレクションの時に書きましたけど
シングル曲って「どこに向けて発信してんねん!?」って曲が多くて
それを集めるとどうしても、アルバムも「どこに向けて発信してんねん!?」ってなりますよね。
せっかく「怒涛の達人」や「NIPPONの楽しみ」という良作のアルバムをリリースしてて
そこから曲を集めたら凄く楽しいベストアルバム出来そうだったのに。
特につい一ヶ月、二ヶ月前に出したシングル曲が入ってて
流石にそれはシングル買った人がアホみたいやないかと。


で、今回収録曲を見てるとやたら「タイアップ曲」が多く、
「俺はこんだけCMソング歌いました!」を見せつけるようなコンセプトになっていて
僕が前回「やってミソだけいらん!」って書いたんですけど
むしろ「やってミソ!だらけになってしまった」という感じで
そらそんなベストアルバムおもんないわと。


アルバムからのチョイスも「なんでそんな曲?」ってのばっかりですからね。
なんで「ものまねアワー」とか入れるんだと。
どういう経緯であれを「ベスト」だと思ったのかと。
ただ新曲である「ハンバーガーショップ(国会編)」は超名作です。
このアルバムはこれを聴くためにあると言っても過言ではありません。


というわけで残念な出来になったベストアルバム2で締めさせて頂きました。
次は「娯楽の殿堂」から「The Very Best Of KAEUTAMEDLEY」までの3枚のレビューを書かせて頂きます。

怒濤の達人

怒濤の達人

NIPPONの楽しみ

NIPPONの楽しみ