最近の嘉門達夫について

知ってる人も居ると思いますが、
僕は以前嘉門達夫さんの元でブレーンをやっていました。
具体的に説明すると、本人からメールやFAX等で
「次こんな事やるからネタちょうだい」という連絡を貰ってネタを考えたり
僕の場合はもっと進んで、アルバムのデモMDを頂いて
それの感想や、どこを手直しすればいいかのアイディアを提案したり
ライブのリハに行ってセットリストやネタの構成にアイディアを出したりしてました。


ただ、僕は本来「クレーマー気質」なんですよね。
ここのブログでもお笑い番組見て、芸人のレビューとかエラソーに書いたり
本サイトでも、飯塚雅弓さんのライブの構成に文句付けたり
「俺ならこうする!」みたいなのを書いちゃったりしてますから。


嘉門さんの元でも僕の性格は変わりませんでした。
僕が「面白い」と思ってた時期の嘉門さんとは
どんどん違う方向にズレ初めていました。
たぶん、僕だけじゃなく多くの人が今の嘉門さんのCDを聞いても
魅力を感じないだろう。事実CDが売れてないわけですし。


そう思った僕は嘉門さんの元へ、まぁある種批判的なメールを送りました。
ただ、本人の返事を見てる限り、とりあえずうるさいから上っ面だけ
返事してるような感じを受けたんですね。


それに憤りを感じた僕は、公式の掲示板に嘉門さん、ファンの人
そしてプロデューサーである新田一郎氏の目に届くであろう
場所で僕は嘉門さんの批判をしました。
本人に、そして周りの人間に気付いて欲しい一心で。


しかし、それが本人の逆鱗に触れてしまったらしく
絶縁状を叩きつけられ、僕はブレーンをクビになりました。


まぁ、本来はこういう事はリストラされた会社の文句書いてるみたいで
格好良くはないと思うので、やめとこうと思ったのですが
ブレーンをクビになってしばらくして出たアルバム
「元気が出るCD」にて、僕が昔に出したネタやアイディアが
なんか勝手に使われてたので
「いやいや『一切俺に関わるな!』と言った奴のネタ使うってどうよ?」
と思ったので僕もこの場を借りて、嘉門さんに伝えたい事を
つらつらと書いてみたいと思います。


今の嘉門さんのCDを聞いてると、傾向として
1、昔は良かったという懐古主義
2、独身女性の気持ちを代弁したもの
3、「替え唄メドレー」に代表される、コンセプトを絞った小ネタ集


の3つをぐるぐる回ってる感じなんですね。
1はテーマとして決して笑えるようなテーマじゃないし
2は変に女性の味方をしようとしているために
ツッコミの笑い(「ペンション」みたいなの)は期待出来ない。
どれもストレートに笑える作品ではないんですね。


いや、昔っから1、2辺りはテーマにしてたんですけど
いろんな事を描いてる中の一部だったんですが
どうせも最近この二つに変に固着してる気がします。
同じテーマばかりを描いてると、ネタ切れも起こしますし
どんどんコアな方向に進んでいってしまう。
例えば1なら団塊の世代、2ならそれこそテーマになってる独身女性なら
感情移入も出来るでしょうけど
そうじゃない人はどんどん付いて行けなくなっちゃうと思うんですよね。
特に嘉門ファンって昔ヤンタン聞いてた団塊Jrの男性が多い気がするんですが
この枠が完全にほったらかしになってるのはどうかと思うんですよ。


それで3ですけど、確かに1や2に比べると確実に笑いが取れるんですけど
こういうストーリーの無いものというのは
最初の食いつきはまぁまぁいいんですが
一回聞いて「あー面白かった」で終わっちゃう。
これだと聞き応えが無いし、わざわざお金出して買おう!
という気が起こらないと思うんですよ。
昔、それこそ「替え唄メドレー」がヒットする前なんかは
こういう「小ネタ集」みたいな曲はちょっとしたつなぎに3〜4つだけで
ほとんどが一つのテーマをストーリー仕立てで追いかけて行く歌で
占められていたんです。
それもいろんな切り口で歌を作っていたので
アルバム1枚の完成度が高く、何度聞いても飽きない内容になっていました。
今改めて聞いてもそう思います。


でも、最近のはもうほとんどが「小ネタ集」ばっかりなんですね。
前述の1や2を除けば。
たぶん、これは「替え唄メドレー」が当たった事によって
本人が「こういうのがウケるんだ!」と勘違いしちゃったんでしょう。


そういえば、以前こんな話がありまして
僕が嘉門さんに「『三色パックの謎』*1が面白かった」と言うと
「今から思えばあそこまで長くする歌じゃなかった」という
答えが帰って来たんです。


でも、あの歌って「マルミヤの三色パックを使ってるとゴマシオだけ残る」
という事を仰々しいアレンジ、仰々しいコーラスを使ってわざわざ2コーラス半
引っ張る事によって「そこまでやらんでも」という馬鹿馬鹿しさに
面白さがあると思うんですけど、それが「替え唄メドレー」が売れた事によって
「変な懲り方をしても仕方がない」という考えにたどり着いてしまったんでしょうね。


元々「替え唄メドレー」のヒットなんて、時代が上手い事作用した
「マグレ当たり」なんで、それを全てだと思わないで欲しいんですけどね。
それより、そこに辿り着くまでの坂を登ってる時こそが
嘉門達夫の一番面白い時」なんじゃないかと思うんです。
出来れば、そこに戻って欲しいですが。
「人生最大のブレイク」を「マグレ当たり」を認めるのは
すごい勇気がいる事なんでしょうけど
でも、そこから吹っ切れないと、前には進めないと思うんですよ。


一番最近のアルバム聞いてても、過去に発表した作品「もうええやろキミ!」と
「よくわかる日本史」のパート2が収録されてるんですが
「もうええやろキミ!」はイントロやサビの部分をごっそりカットしてるし
「よくわかる日本史」もオリジナルにあった
「アーティスト紹介ナレーション」がカットされてるんですね。
たぶん嘉門さん本人は、さっきの「三色パックの謎」と同じで
「不必要な部分」としてカットしたんでしょうけど
でも、カットされた作品を聞いてみると、
やっぱり必要な部分だったんだという事が解ります。
落語の「目黒の秋刀魚」というのに、
秋刀魚の脂や骨を「体に悪いから」という理由で取り除いたら
秋刀魚が凄くマズくなったというくだりがあるんですがまさにそんな感じです。
一見ムダだと思うものにも、実は全体を構成するのに必要だっりするんです。


昨日のブログに「ぱにぽにだっしゅ!」の項目に
「スタッフが全力でバカをやってる事に好感が持てる」と書きました。
今の嘉門さんに欠けてるのはまさにそこで
「全力でバカをやってない」んですね。
たぶん、「替え唄メドレー」のブレイクで一時だけでも
「メジャー歌手」になってしまった為に「全力でバカをやる事」に
テレを感じてしまっている、そんな感じが本人の態度からも見受けられます。


だって、「ぱにぽにだっしゅ!」なんて、たった1話だけやった時代劇パロディの
為にわざわざ必殺シリーズっぽいエンディングテーマを作るんですよ。
なんかそういう「どうしようもないくだらない事」に全力を注ぐ姿勢を
嘉門さんも見習って欲しいです。

*1:アルバム「日常」収録。マルミヤの三色パックのゴマシオだけが残るというテーマを切ないメロディ、アレンジ、コーラスで歌い上げる名曲