「それはまるで」(ドラクエ編)

彼女に別れを告げられた僕は
この世で一番情けない存在でした


それはまるで
ムーンブルクの王女にHPを追い抜かれてしまった
サマルトリアの王子のようであり


それはまるで
歴代のボスの中でもなかなか名前を思い出してもらえない
ミルドラースのようでもあり


それはまるで
あんだけ強いようなネタフリしていて
いざ仲間になったら弱かったテリーのようでもあり


それくほど情けない僕でした


思えば僕たちは合わなかったのかも知れない
なんだか微妙にズレていたのかも知れない


それはまるで
さんざんすれ違った挙句
リリザの町に居たサマルトリアの王子のようであり


それはまるで
勇者の作戦無視してボスキャラにザキばっかり唱える
クリフトのようでもあり


それはまるで
テパの事件を知る前なのに「ラゴス?知らんなそんな男は」
と言ってくるベラヌールの看守さんのようでもあり


それくらい微妙にズレていました


彼女を失い 一人の後の僕は
この世に存在する立場がありませんでした


それはまるで
どのプレイヤーからも
ガーデンブルグの人質にされるトルネコのようであり


それはまるで
IIの世界で「ドラゴンキラー」よりも攻撃力が落ちてしまった
ロトの剣」のようでもあり


それはまるで
レベル1のままずっとルイーダの酒場
預けられっぱなしのピピンのようでもあり


それほど空しい日々でした


彼女と別れた後の僕は
心に大きな穴が開いたようでした


それはまるで
やっとロンダルギアに着いた途端
リザードザラキで全滅させられた時のようであり


それはまるで
赤く光るフラッシュと旋律の音楽と共に流れる
「あなたは しにました」の文字のようでもあり


それはまるで
はぐれメタルが逃げた後にドラゴラムで変身して
残ったダートリカントを炎で倒した時のようでもあり


二人の恋は 終わりました


Amazonアソシエイト「それはまるで」/嘉門達夫