嘉門達夫が昭和ノスタルジィブームに乗れなかった理由：昨日の風はどんなのだっけ？

僕が以前書いた記事にトラックバック頂いたのですが
記事の中にこういう事が書いてありまして。

うーんでも『明るい未来』と『少年はいつの日もバカ』だと、作品的に厳しいかなあ。なんか変に良い話に落ち着かせないで、軽いあるある話のほうが、ブームに乗っかれたような気がする。

嘉門達夫のこの時期ぐらいからの、懐かしソングって、世代的に直撃の人ばかりなんですよね、やっぱりブームと呼ばれるぐらいだから、それこそ体験していない世代の人も、「なんか知らんけど懐かしい」と思わせないとダメなのに、それが嘉門さんの懐かしソングには稀薄なように思う。

これを読んで、おりたさん鋭いなと思いました。
というのも「明るい未来」って最初「昔懐かしい情景を振り返るだけ」の
歌だったんですよ。
それをプロデューサーである新田一郎が
「昔の情景を振り返ってるだけじゃないか」と言って当時代プロに所属してた
水戸華之介に補作詞をさせて、良い話方向にしたんですけど
僕は完成品を聞いて「あー新田一郎余計な事したなー」って思いました。
正直、世代じゃない人間からすると「昔は良かった」というのを
あまり全面に出されると正直ウザイんですよねｗ
それなら情景だけを淡々と歌って、聞いてる人に
「これを聞いてどう思うのか？」というのを委ねた方がいいですよね。

「少年はいつの日もバカ」はコンセプトそのものはあまり変わってないんですが
「主人公がエロ本を買って、どうにかして修正部分を見ようと奮闘する」
というくだりがあって、これが嘉門達夫の実体験も踏まえて描かれてて
すごく良かったんですよ。タイトルのコンセプトにも一番沿ってましたし。
でもCDになった時にこのくだりがカットされてまして非常にもったいないなぁと。
本人に直接訊いてないので、本人判断なのかプロデューサー判断なのかはわかりませんが。

で、この「少年はいつの日もバカ」と同時発売になった
「人類はいつの日もバカ」というアルバムがあるんですが、
これも元々「明るい未来」の制作を経て「昭和ノスタルジィ」にコンセプトを
置いたアルバムとして嘉門達夫は最初制作してたんですよ。

それでデモテープを作って新田一郎に聞かせた所
「お前はお笑いブームの最中に何をやってるんだ！」と
怒られて、CDで発売されたコンセプトになったんですよ。
後に嘉門達夫がデモテープをくれて聴いたんですけど
どう考えても最初のデモテープの方がいいんですよ。
「昭和ノスタルジィを振り返る」というコンセプトなんですけど
変に美談にせずに、情景を振り返るだけの歌がメインになってましたし。
（嘉門達夫自身はあまり美談として歌にはしたくないって思ってるのかも。）

CDとなって発売されたバージョンって嘉門達夫が提唱する「昭和ノスタルジィ」と
新田一郎が提唱する「当時のお笑いブームに乗っかる」というのが
ごちゃ混ぜになった挙句どっちつかずになってしまって
聞いてる人が「嘉門達夫が何を伝えたいのか？」っていうのが
よくわからないようになってしまったように思えるんですよね。

そのお笑いに乗っかったのも「ジ・アンサーソング〜テツandトモに捧ぐ〜」は
面白かったんですけど、それ以外が酷いというか
恐らく急遽コンセプト変更で時間がなかったんでしょうねぇ。
はなわの「佐賀県」のパロディで「日本全国都道府県の歌」ってのがあるんですけど
これ昔没になった「JAPAN」っていう歌をそのまま流用してたし
しかも、これって「日本全国の各都道府県の特徴を挙げていく」
っていう内容なんですけど、既にはなわがそんな本出してるんですよね。
その本がどこまで売れたかは知りませんが、あの当時のはなわの勢いなら
たぶん嘉門達夫のアルバムより売れてるでしょうし。

いくら時間がないからといえ、その辺のリサーチはしとけよというか
リサーチせんでも知っとけよ！って思うんですけどね。
その辺がなんか現役でありつつ変に大御所になってしまった弊害ですよね。

このアルバムの帯にも「テツandトモもはなわもみんな嘉門達夫を聞いてたんだ！」
みたいなフレーズが書いてあるんですが
その考え方がいかんのとちゃうんかな？と。
そもそも「俺が元祖」って言われても若い子は「ふーん」でしょうし。
元祖として注目されてるなら、自然と注目されてるハズですしね。

これを聞いた時に「やっぱり新田一郎と組んだのは失敗じゃないか？」
と思うんですけど、ただ嘉門達夫は大の新田一郎信者で
嘉門達夫が楽屋で僕に「みんないろいろ言うけどあの人は凄い人なんや！」という
熱弁を奮ってるのを聞いた時「あーなんかいろいろ厄介だなー」と思いましたね。
まぁ売ってもらった恩義はあるんでしょうけど、そことは切り離して考えられる
ドライさが今の嘉門達夫には必要だと思います。